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このブログではシステムエンジニアやプログラマ、プロジェクトマネージャーがIT業界を生き抜くための支えとなる古今東西の名言や言葉を紹介します。

プロジェクト監査に苦しむプロマネへ送るニーチェの名言

      2016/02/13

Nietzsche1882

気合を入れて作ったプロジェクト報告書が仇になる?

あなたの職場では、昨年に数十億の赤字プロジェクトが発生して以降、一定規模以上の案件では月に1回、「プロジェクト管理部」のレビューを受けることが必須となりました。

現在のプロジェクトがキックオフしてから、もうすぐ1ヶ月。

あなたはプロジェクトマネージャーとして、初めてのプロジェクトレビューを迎えようとしています。

あなた 『レビューに必要なドキュメントは……プロジェクトの工程表と、体制図と、バグ管理台帳と……ええと、それからそれから……。うーん、顧客とのキックオフミーティングの時に作成した資料があるけど、これだけじゃ心配だな……。今晩は徹夜で資料を作るかぁ。』

結局、あなたは朝の4時まで掛かって報告用ドキュメント50ページを作成し、
朝の5時に、レビュー出席者10人分の資料(計500枚)の印刷が終わり、
朝の7時30分に、紙のクリップ留めが終わり、
それからようやく、椅子を並べてその上で8時45分まで仮眠を取れたのでした。

そして、9時。

プロジェクトレビューの会議は、プロジェクト管理部・部長の一言から始まりました。

部長 『お、目が赤くなってるし、ヒゲも伸びてるけど、昨晩は帰ってないのか?それじゃ、これからレビューを開始するので、まずは用意してくれた資料の説明をしてくれるかな。』

あなた 『はい!ワタクシの方から説明させていただきます!では、まずお手元の一番上の資料から順番に……。』

その後、あなたは約1時間、準備してきた資料をひたすら読み上げました。

気づくと出席者の数名は居眠りをしているようでしたが、それも気にせず、とにかく用意した資料を説明することで精一杯でした。

あなた 『……ということで、以上で用意した資料の説明は以上となります。』
(ふーやっと終わった。これだけ資料を準備したのだから、文句ないだろう!)

部長 『はい、お疲れさん。でも、いやーこれはひどいなあ。』

あなた 『え、何がですか?』

部長 『まず、この体制表だけど、こっちの要員計画書と人数が合ってないよね?』

あなた 『あ、体制表はお客様とのキックオフミーティングで提出したものですが、その後に変更があったので、こちらの資料の方が最新ですね……。』

部長 『それからリスク管理表の項番10だけど、このリスクについてはどう対応策を考えているの?』

あなた 『えーと、その点についてはこの1ヶ月で技術検証が終わっているので問題ないことが判っていて……』

部長 『それからそれから、この資料だけどプロジェクト名が間違ってないか?』

あなた 『あ、ごめんなさい、それは別のプロジェクトの報告書をコピペした時に直すのを忘れて……。』

部長 『とにかく、この状態じゃプロジェクト管理部としてOKは出せないな。
明日の9時にレビューの続きをやるから、それまでに全部修正しておけよ。』

あなた 『はい、わかりました……。』 (ああ、今夜も徹夜だ……)

結局、レビュー会議での指摘事項は、細かい誤字脱字も含めて50個以上もあったのでした。

せっかく気合を入れて、たくさんドキュメントを準備したのに、どうしてレビューをクリアできなかったのだろうか……。

そんなあなたへ送る言葉が、ドイツの哲学者・ニーチェの名言です。

虫が刺すのは悪意からではない、生きるためだ。
評論家も同じだ。
彼らはわれわれの血が欲しいだけで、苦しめてやろうという了見はない。

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(1844-1900)

ニーチェとは?

ニーチェはドイツの哲学者・古典文献学者で、『ツァラトゥストラはこう語った(ツァラトゥストラはかく語りき)』などの著作で知られています。

彼は「真実の人間存在」を研究し、反キリスト教的・反道徳的態度を取った「異端」の存在でした。

キリスト教は

「人間は弱者であり、皆が同じ苦難を乗り越えることに意味がある」

という前提のもとに成り立つ思想であり、もう一方のニーチェの思想、

「人間の人生とは貴重なものであり、自分自身の力を肯定し、喜びや快楽を求めるのは善いことである」
「人間を動かす動機とは、野心や達成、そして『自分自身を増大、拡大させようとする本性』すなわち『力(権力)への意志』である」
「人間は、その他大勢の人間と同じ行動を取るのでは価値がない、即ち他者を超越して自分自身の意思で行動する『超人』となるべきある」

とは相容れないものであったのです。

「神は死んだ」と宣言し、神をも否定するその態度に、多くの評論家から批判が集まりました。

しかし、ニーチェはその批判者、自身の敵とも呼べる存在を虫に喩えて「悪意はない」と言い切るのでした。

まとめ

監査とは、「一定の基準に照らして成果物がそれらに則っているかどうかの証拠を収集し、監査対象の有効性を保証すること」を意味します。

ですから、監査担当者は(別にあなたのことが憎いわけではなく)成果物に不備があれば、決して見逃す訳には行かないのです。

それならば、監査を受ける側の対応策として「ボロを出さない」ためには、「監査を受ける成果物を必要最小限に留める」ことが重要です。

その上で、上級テクニックとして、「敢えて一つボロを出してやる」ことが効果的です。
ニーチェの名言に倣うならば、「血が欲しいのであれば血を吸わせてやれば良い」のです。

監査担当者はきっと喜んで監査報告書に「◯◯に不備があり改善を求めた」と書くことでしょう。

プロジェクトマネージャーは決して「弱者」ではありません。

「貴重な時間」をプロジェクト監査報告に費やすのではなく、本来のプロジェクト管理に力を注ぎたいものですね。